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ブロック行列の公式を使いたい

覚えたばかりの公式を使いたいので, 使えそうな問題を探しました.

Hadamardの不等式

$n$次の正方行列$A$について,
列ベクトルを考えて$A = [a_1 \ a_2 \ a_3 \cdots \ a_n]$とすると,
\[
{|}\det A {|} \leq \|a_1\| \|a_2\| \cdots \|a_n\|
\]
が成り立つ.

証明

$A$がランク落ちしていたら左辺は0で当たり前の式なので,
$A$はフルランクとします.

練習のために, ブロック行列の行列式に関する公式を使いたいです.
公式をメモっておくと,
\[
\det\left[\begin{array}{cc}
A & B\\
C & D
\end{array}\right]=\det A\cdot\det\left(D-CA^{-1}B\right)
\]
です.

補題

$n$次の正定値行列$A_n$とその$(i,j)$成分$a_{ij}$について,
\[
\det A_n \leq a_{11}\cdots a_{nn}
\]
となる.
つまり, 行列式は対角要素の積以下になる.

証明

$A_n$を$n$次の正定値行列とします.

まず, $A_n$の対角要素は全て正です.

証明します.
$A_n$は正定値なので, 0でない任意のベクトル$x$について

\[
x^t A x > 0
\]
が成り立ちます.
$x$を, 第$i$成分が1, 他は全て0であるようなベクトルにすると,
\[
x^t Ax = a_{ii}
\]
となるので,
$A$が正定値であることから,$a_{ii}>0$を得ます.

次です.
$\det A_n \leq a_{11}\cdots a_{nn}$であることを, 帰納法を用いて証明します.

$n=1$のときは等号ですね.

$n-1$まで不等式が成り立つとして, $A_n$を
\[
A_{n}=\det\left[\begin{array}{cc}
A_{n-1} & b\\
b^{t} & a_{nn}
\end{array}\right]
\]
と分割しておきます.
ここでブロック行列の行列式をドヤ顔で計算します.
\begin{eqnarray*}
\det\left[\begin{array}{cc}
A_{n-1} & b\\
b^{t} & a_{nn}
\end{array}\right] & = & \det A_{n-1}\cdot\det(a_{nn}-b^{t}A_{n-1}^{-1}b)\\
& = & \det A_{n-1}\cdot\left(a_{nn}-b^{t}A_{n-1}^{-1}b\right)\\
& \leq & \det A_{n-1}\cdot a_{nn} \leq a_{11}\cdots a_{nn}
\end{eqnarray*}
です.
最後の行の不等号は, $A_{n-1}$が正定値であることを使うと出てきますね.
以上より,
\[
\det A_n \leq a_{11}\cdots a_{nn},
\]
つまり, 正定値行列の行列式は, 対角要素の積で上から抑えられます.
補題おしまい

本題

欲しい式は
\[
{|} \det A {|} \leq \|a_1\| \|a_2\| \cdots \|a_n\|
\]
です.
おもむろに$A^tA$としてみます.
これは正定値です.
なぜか.
0でないベクトル$x$に対して,
\[
x^t (A^t A)x = (Ax)^t Ax = \|Ax\|^2 > 0
\]
だからです.
フルランクを仮定しているので正です.

$A^tA$は正定値なので, 補題を適用してみます.
補題から, $A^tA$の行列式は, 対角要素の積で抑えることができます.
では, $A^t A$の対角要素を考えてみます.
\[
A = [a_1 \ a_2 \ a_3 \cdots \ a_n]
\]
としているので,
\[
(A^tA)_{ii} = a_{i}^t a_{i}
\]
ですね.
つまり, $A^tA$の対角成分には列ベクトルのノルムの二乗が並びます.
したがって補題から,
\[
\det A^t A \leq \|a_1\|^2 \|a_2\|^2 \cdots \|a_n\|^2
\]
です. つまり,
\[
 {|}\det A {|} \leq \|a_1\| \|a_2\| \cdots \|a_n\|
\]
ですね. 所望の不等式が得られました.

感想

等号成立条件は, $A$の列ベクトルが直交することですね.
""公式の威力""を感じながら生きたいです