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半正定値対称行列で不等式とは

半正定値対称行列を非負の実数のように扱いたい...という話その1です.

まずは大小関係を定義します.
$\geq$という記号を行列に用いて,
$A\geq O$を$A$が半正定値対称行列であることを表すことにします.

対称行列$A$, $B$を持って来て, $A-B \geq O$とすると何が起こるのか, を考えます.

復習

$A$, $B \in M_n$の半正定値対称行列とする.
$\lambda _i (\cdot)$について,
例えば$A$の固有値を小さいものから並べたものを,
\[
\lambda_1 (A) \leq \lambda_2 (A)\leq \cdots \leq \lambda_n (A)
\]
と表すとする.
このとき, $A$, $B$の和の固有値について,
\begin{equation}
\lambda _{i} (A+B)\geq \lambda_{i} (A)
\end{equation}
が成り立つ.

これを使っていろいろな不等式を作りたいですが, まずは準備.

半順序関係

対称行列$A$, $B$について, $A-B$が半正定値対称行列になる時,
\[
A \geq B
\]
と表すことにします.

$\geq$ は半正定値対称行列上の半順序関係になっています.
反射律, 推移律, 反対称律の確認をします.

1. 反射律

\[
A - A = O \geq O
\]
より
\[
A \geq A
\]
です.

2. 推移律

\begin{align*}
A &\geq B \\
B &\geq C
\end{align*}
なら,
\[
A - C = ( A - B ) + ( B - C ) \geq O
\]
です. 半正定値対称行列の和は半正定値対称行列ですから.

3. 反対称律

\[
A \geq B \ , \ B \geq A
\]
のとき,
$A-B$ を直交行列 $U$ で対角化した行列 $D$ を考えると,
直交変換について半正定値性は不変なので (2次形式を取ればいいですね),
\begin{align*}
U^t (A-B)U = D \geq O \\
U^t (B-A)U = -D \geq O
\end{align*}
となります. $D$は対角行列なので, $D = O$ となってしまいます.
ゆえに $A-B = UOU^t = O $ より $A = B $ ですね.

以上より, $\geq$ は対称行列の上で半順序です.

順序関係にはなりません.
例えば,
\[
A=\left[\begin{array}{cc}
2 & 0\\
0 & 1
\end{array}\right],\ B=\left[\begin{array}{cc}
1 & 0\\
0 & 2
\end{array}\right]
\]
とすると, $A$, $B$は対称行列ですが, $A-B$ は正定値でも負定値でもありません

感想


\[
(O\geq O ) / < \text{諸君, おはよう}
\]


$A \geq B \ (\geq O) $ は $A - B \geq O $ ということであり,
$A = B + (A-B) $ なので, 前回導出した,
\[
\lambda _{i} (A+B)\geq \lambda_{i} (A)
\]
を利用すると,
$\lambda _i (A) = \lambda_i (B + (A-B)) \geq \lambda_i (B)$
です.
まとめると, $A \geq B \geq O$ なら $\lambda _i (A) \geq \lambda _i (B)$ です

大小関係らしきものが現れました. この式を目標にするほうが分かり良かったですねすみません.